3月21日

宝塚をご存知ですか?東の東大、西の宝塚と言われるほど、高度な技術を鍛えて高校生くらいの年齢の子どもたちが、幼い頃から憧れて夢見た宝塚音楽学校の受験に臨む。受かってから二年くらいの厳しいレッスンを受け、初舞台を踏む‥‥‥と聞いている。

私が初めてその舞台を見たのは、中学生の時だった。なんとそれは父が連れて行ってくれた。特に芸事が好きな人ではなかった。質実剛健な人だった。どう考えても宝塚とは無縁な人だった。ずっと後になって、そのことを妹たちに話した時、妹たちは声を揃えてこう言った。お父さまはラインダンスが見たかったのよと。私は思いもよらなかったが、早熟な妹たちは、私より「男」を知っていたのかな。そして父は父である前に一人の男だということを。

その時からずっと時間が経って、私はあの時妹たちが言っていたことを、ああ、そうだったのかなと、とても優しい気持ちで理解できるようになった。

健康だった父も加齢に打ち勝つことはできず、しばしば入院するようになった。そんな頃、病室に付き添っていた私は、点滴を取り替えにきた看護師さんを追う父の目を見た。その目は60年間、私が見てきた父親の目ではなかった。明らかに父の目ではなかった。90歳を超えてなお女を見る男の目だった。私は何故かその時、父を愛おしく思った。もう目の前に死を迎えているのに、私や母を見る目とは違う強い眼差しだった。おかしかったけど、いいなと思った。こういう人間の本能が、きっと人間を生かしているのだろう。

昨今、ジェンダーの問題が沙汰される。男と女しか世界にはいないと思っていたが、男と女が一つ体を共有しているのだろうか。中学生の頃、上級生に憧れたりした経験はおそらく誰もが肯定するだろう。ただそれは憧れという気持ちの問題だった。今話題に上るのは、性的に吸い寄せられること、それは憧れを遥かに超える、もっと強くもっと激しい本能の欲求なのだろうと思う。

なかなか難しい問題だ。一般論として考えることはできても、それが自分の身近な人だったら?私には即答出来ない。宝塚に憧れる気持ちの中には、多分に倒錯した感情があると思うけど、理想的な美しい男性を演じるタカラジェンヌたちも、退団すると男性と出会い結婚もする。面白い。

最近若い男の子たちが美しい。韓国の俳優さんたちも美しい。やっぱり男の子に熱をあげておくほうがいいんじゃない?